読書の記録『夜と霧』

トップ > 読書 > 読書の記録『夜と霧』

読書の記録


夜と霧

ヴィクトール・E・フランクル, , 2013-04-27, *****

人は、この世にもはやなにも残されていなくても、心の奥底で愛する人の面影に思いをこらせば、ほんのいっときにせよ至福の境地になれるということを、わたしは理解したのだ。
et lux in tenebris lucet 光は暗きに照る…。
感情の消滅を克服し、あるいは感情の暴走を抑えていた人や、最後に残された精神の自由、つまり周囲はどうあれ「わたし」を見失わなかった英雄的な人の例はぽつぽつと見受けられた。一見どうにもならない極限状態でも、やはりそういったことはあったのだ。
およそ生きることそのものに意味があるとすれば、苦しむことにも意味があるはずだ。(中略)苦悩と、そして死があってこそ、人間という存在ははじめて完全なものになるのだ。
それはなにも強制収容所にはかぎらない。人間はどこにいても運命と対峙させられ、ただもう苦しいという状況から精神的になにかをなしとげるかどうか、という決断を迫られるのだ。
「苦悩という情動は、それについて明晰判明に表象したとたん、苦悩であることをやめる」(『エチカ』第五部)
「あなたが経験したことは、この世のどんな力も奪えない」
全体として断罪される可能性の高い集団にも、善意の人はいる。境界線は集団を越えて引かれるのだ。