読書の記録『アッコちゃんの時代』

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読書の記録


アッコちゃんの時代

林真理子, , 2010-05-29, ***--

自分の若さと美しさを金に換えない女には、男たちはいくらでも奉仕してくれるということを厚子はよく知っていた。
吝嗇と嫉妬は正比例するということだ。(吝嗇:むやみに金品を惜しむこと。また、そういう人や、そのさま。)
男が同情するということは傍観者になったということだ。
(鷹揚:小さなことにこだわらずゆったりとしているさま。おっとりとして上品なさま。)
妻というのは、なんと損なものだろうかと厚子は思う。子どもを産まされ、めんどうをみなくてはならない。家事もし、姑や親戚とも付き合うのだろう。そんなことをしても、夫の心が離れていく時は離れていく。
「だけどアッコさん、女房や子どもがいるからって、人を好きになっちゃいけないんですか。人は結婚した後で、本当に好きになった人に出会っても、近づくことは出来ないんですか」
「私ね、ひな子を見てつくづく思ったんです。私たち、何も悪いことをしていないって。モテもしないし、勇気もないし、何でもない人たちが、私たちを見て何かぐだぐだ言ってもそれはもうほっときなさいって、彼女にも言ったんです」
金と力のある男たちは、空気や水を求めるように若く美しい女を求める。それを受けとめてやるのは、若く美しい女の義務なのだ。