読書の記録『虚空の逆マトリクス』

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読書の記録


虚空の逆マトリクス

森博嗣, , 2006-12-20, *****

バーチャルの世界でも、結局、人は社会の中でしか生きられない。他人に囲まれて、他人と比較しないと、自分を見失ってしまうのだろう。
物体よりも、信号の配列が重要なのだ、と僕らは考えている。それは言い換えれば、躰よりも心が大事だ、と同じこと。だから、バーチャルとは、そもそも本質だったものが本質に、本物だったものが本物になっただけなのだ。
小説家というのは、いうなれば誤解を製造しているようなものなのだ。
変化の原因は継続しているのに、変化はほとんどの場合、瞬間的に訪れるものだ。だいたい、物事のメカニズムはこれに集約される、と私は思っている。
「住まいは田舎がいい、森と日溜まりでひと寝入り、飛ぶ鳥、稲と日照り、まだ独りもいいが、家内はいます」 「すまいはいなかがいい、もりとひだまりでひとねいり、とぶとり、いねとひでり、まだひとりもいいが、かないはいます」 (ゲームの国(リリおばさんの事件簿1)の回文)